結論から言います。Bambu Lab P2Sは、P1Sの「惜しかった部分」をほぼ全部つぶしてきた正統進化モデルです。
僕は普段A1 miniをメインで使っているんですが、P2Sに触れて「密閉チャンバー機ってこんなに安心感が違うのか」と正直びっくりしました。サーボモーターのフィラメント制御、AIカメラのリアルタイム監視、ノズル交換が工具なしで1分。P1Sユーザーが「次はこれだろ」と思う進化が全部入っています。ただし、14万2,000円(Combo版)という価格は気軽に出せる金額ではありません。本当に買い替える価値があるのか、A1 miniユーザーの視点から正直にレビューします。
Bambu Lab P2Sとは?P1Sの後継機としての位置づけ
Bambu Lab P2Sは、2024年に発売されたP1Sの後継にあたるCoreXY方式のFDM 3Dプリンターです。密閉型エンクロージャーを備えた「箱型」の本格派で、ABS・ASA・PA(ナイロン)・PCといった高温素材にも対応します。
Bambu Labのラインナップでは、エントリーのA1 mini → オープン型のA1 → 密閉型のP2S → フラッグシップのX1Eという階段になっています。P2Sは「趣味の延長で本格素材にも手を出したい」ホビイストにドンピシャのポジションです。
まずはスペックを整理しておきます。
| 項目 | スペック |
|---|---|
| 造形方式 | FDM(CoreXY構造) |
| 造形サイズ | 256×256×256mm |
| 最大速度 | 600mm/s |
| ノズル温度 | 最大300℃ |
| ベッド温度 | 最大110℃ |
| エンクロージャー | 密閉型(Adaptive Airflow搭載) |
| ディスプレイ | 5インチ 720×1280 カラータッチスクリーン |
| カメラ | 1080p高フレームレート + NPU(AI検知) |
| エクストルーダー | DynaSense PMSMサーボモーター |
| ノズル交換 | 1クリップ クイックスワップ(工具不要) |
| AMS | AMS 2 Pro(Combo版に付属、最大4色→拡張20色) |
| 対応素材 | PLA, PETG, TPU, PVA, PET, ABS, ASA, PA, PC |
| 接続 | Wi-Fi, LAN, USB |
| 重量 | 約14.3kg |
| 価格(Combo版) | ¥142,000(2026年3月時点) |
海外ではStandard版が549ドル、Combo版(AMS 2 Pro付き)が799ドルで販売されています。日本のAmazon価格はCombo版で14万2,000円です。
P1Sから何が変わった?7つの進化ポイント
P2Sの魅力は「P1Sのここが惜しかった」を全部つぶしてきたところ。7つの進化ポイントを順番に見ていきます。
1. 5インチカラータッチスクリーン
P1Sの操作パネルは小さなモノクロ液晶+物理ボタンでした。正直、毎回スマホを取り出してBambu Handyアプリを開くのが面倒だったんですよね。
P2Sでは5インチ(720×1280)のカラータッチスクリーンに一新。プリントの進行状況、カメラ映像、フィラメント情報がタッチ操作で直感的に確認できます。
A1 miniの2.4インチ画面も十分使えていたんですが、P2Sの5インチはカメラプレビューがそのまま表示されるので、別次元の安心感があります。
2. DynaSense PMSMサーボモーター
個人的に一番大きな進化がこれです。
P1Sのエクストルーダーはステッパーモーター(一般的なステップ制御のモーター)でした。P2SではPMSMサーボモーター(永久磁石同期モーター)に変更されています。
何が変わるかというと、フィラメントを押し出す力がP1S比で70%向上。最大8.5kgの押出力があります。さらに20kHzという超高速サンプリングでフィラメントの状態をリアルタイム監視しているので、詰まりやグラインド(フィラメントの削れ)を即座に検知してプリントを止めてくれます。
A1 miniでTPU(柔らかい素材)を印刷したとき、送り出しが安定せずに2回失敗した経験があります。サーボモーターのトルク制御なら、柔軟素材でも安定したフィードが期待できます。これは地味にうれしい進化です。
3. 1クリップ クイックスワップノズル
P1Sのノズル交換は工具が必要で、ホットエンドを加熱してからレンチで外す作業でした。慣れれば数分ですが、熱いパーツを扱うので初心者にはハードルが高かった。
P2Sではクリップを外すだけでノズルが抜けます。公称1分以内で交換完了。0.2mmの精細ノズルと0.6mmの高速ノズルを用途で使い分けるのが格段にラクになりました。
研磨材入りフィラメント(カーボンファイバーPETGなど)を使うとノズルが摩耗するので、交換頻度が上がります。そういうユーザーには特に恩恵が大きいポイントです。
4. 1080p AIカメラ + NPU
P1Sにもカメラはありましたが、静止画ベースの1080pでAI検知機能はありませんでした。
P2Sのカメラは1080pの高フレームレート動画対応。さらに2 TOPSのNPU(ニューラルプロセッシングユニット)を搭載し、印刷中にスパゲッティ状の失敗をAIが自動検知します。
夜中にプリントを走らせて朝起きたらスパゲッティの山…という悲劇を防いでくれるのは本当にありがたい。A1 miniでも何度か経験していますが、フィラメントと時間のダブルロスは精神的ダメージが大きいんですよね。
5. Adaptive Airflow
密閉型チャンバーの弱点は「冷却不足」でした。P1Sでは、PLAやPETGなど冷却が必要な素材を印刷するとき、ドアを開けないとオーバーヒートすることがありました。でもドアを開けるとチャンバーの意味がない。
P2SのAdaptive Airflowは、ドアを閉めたまま外気を取り込める機構です。ABSやASAの高温素材ではチャンバーを密閉して保温し、PLAではエアフローを開いて冷却する。素材に応じた温度管理が自動化されています。
これ、地味ですがかなり重要です。A1 miniはオープン型なのでPLAは得意ですが、ABSは反りとの戦いでした。密閉チャンバー+アダプティブ冷却で素材を選ばないのは、1台で何でもやりたいホビイストにとって大きなメリットです。
6. AMS 2 Pro標準(Combo版)
P1S Comboに付属していたのはAMS初代でした。P2S ComboにはAMS 2 Proが付属します。
AMS 2 Proは最大4色のフィラメントを自動切り替え。ユニットを追加すれば最大20色まで拡張できます。RFID対応の純正フィラメントなら温度・速度を自動設定してくれるので、セットしたらあとはBambu Studioで色を割り当てるだけです。
ただし、色の切り替え時にパージ(フィラメントの廃棄)が発生する点は変わりません。Tom’s Hardwareのレビューでも「AMS unit wastes filament」が唯一のConとして挙げられています。マルチカラーを常用する方はフィラメントのコストを計算に入れておいてください。
7. 最大速度600mm/s
P1Sの最大500mm/sから600mm/sにアップ。100mm/sの差です。
正直に言うと、実際の印刷では最大速度より加速度や移動速度の方が体感に効きます。カタログスペック上の速度差を過度に期待しない方がいいです。ただ、CoreXYの剛性とサーボモーターの組み合わせにより、高速域での印刷品質はP1Sより安定しているという評価が海外レビューでも多いです。
P1Sとの比較表
P1Sからの買い替えを検討している方のために、主要スペックを並べて比較します。
| 項目 | P2S | P1S |
|---|---|---|
| 最大速度 | 600mm/s | 500mm/s |
| エクストルーダー | PMSMサーボ(押出力8.5kg) | ステッパーモーター |
| ノズル交換 | 1クリップ(工具不要) | 工具で手動交換 |
| ディスプレイ | 5インチ カラータッチ | 小型モノクロ+物理ボタン |
| カメラ | 1080p動画 + NPU AI検知 | 1080p静止画(AI検知なし) |
| 冷却 | Adaptive Airflow | ドア開閉で手動調整 |
| AMS(Combo版) | AMS 2 Pro | AMS初代 |
| 造形サイズ | 256×256×256mm | 256×256×256mm |
| 対応素材 | PLA〜PC(9種) | PLA〜PC |
造形サイズと対応素材は同じですが、それ以外のほぼ全パーツが刷新されています。Tom’s Hardwareは4.5/5のスコアで「P1シリーズの不満点をほぼ解消した」と評価しています。
A1 miniユーザーから見たP2Sの魅力と現実
僕はA1 miniをメイン機として使い続けていますが、P2Sに触れて「ステップアップするならこれだな」と素直に思いました。
A1 miniは3万円で500mm/s、全自動キャリブレーション、マルチカラー対応と、コスパでは最強です。ただし、オープン型なのでABSやASAは難しい。ノズル温度は300℃まで対応していますが、チャンバーがないと反りや層間剥離のリスクが常につきまといます。
P2Sは密閉チャンバー+Adaptive Airflowで、PLAからPCまで1台でカバーできる。サーボモーターでTPUも安定する。AIカメラで長時間プリントも安心。A1 miniでは「ちょっと無理だな」と諦めていた素材や造形が現実的になります。
ただし、A1 miniの3万円に対してP2S Comboは14万2,000円。約5倍です。PLAメインで小物を印刷するだけなら、A1 miniで十分すぎます。「ABSやナイロンに挑戦したい」「もう失敗プリントでフィラメントを無駄にしたくない」という明確な目的がある人向けの投資です。
Elegoo Centauri Carbon 2 Comboとの比較
P2Sの最大のライバルがElegoo Centauri Carbon 2 Comboです。
Centauri Carbon 2 Comboの価格は約79,999円。P2S Comboの14万2,000円と比べると、約6万2,000円の差があります。造形サイズは同じ256mm角、CoreXY構造、密閉チャンバーと、基本スペックは似ています。
ではどこが違うのか。P2Sの優位は「箱出し即印刷の完成度」と「ソフトウェアエコシステム」です。Bambu Studioの使いやすさ、MakerWorldとの連携、AIカメラの自動検知、サーボモーターのリアルタイム制御。ハードだけでなくソフト面の作り込みがBambu Labは一枚上手です。
一方、Centauri Carbon 2 Comboはノズル温度が最大350℃で、P2Sの300℃より高温に対応。硬化スチールノズル標準装備で、研磨材フィラメントにも最初から対応しています。コスパ重視で、ハードスペックで選ぶならCentauriの方が合理的な選択です。
迷ったらこう考えてください。「ソフトの使いやすさ・AI監視・Bambu純正フィラメントのエコシステムに6万円の価値を感じるならP2S。ハードスペックと価格のバランスで選ぶならCentauri Carbon 2 Combo」です。
詳しくはFDM 3Dプリンター比較記事もあわせてチェックしてみてください。
P2Sのデメリット・注意点
良いことばかり書いても参考にならないので、正直にデメリットも挙げておきます。
価格が高い
Combo版で14万2,000円。ホビイストにとって気軽に出せる金額ではありません。Elegoo Centauri Carbon 2 Comboが約8万円、A1 mini Comboが約5万3,000円であることを考えると、価格差は無視できません。
ただし、海外ではCombo版が799ドル(約12万円)で、日本のAmazon価格には若干の上乗せがあります。セール時を狙うのも手です。
AMS マルチカラーの廃材問題
これはP2S固有の問題ではなく、AMS全般の話です。色を切り替えるたびにパージ(廃棄)が発生します。4色プリントだと通常より50〜100g程度のフィラメントが余分に消費されます。
Bambu Studioでインフィルにパージを流し込む設定にすれば多少は軽減できますが、ゼロにはなりません。Tom’s Hardwareのレビューでも唯一のConとして挙げられていたポイントです。
クラウド依存の懸念
Bambu Labのプリンターは、クラウド経由でのリモート印刷・アップデートが前提の設計です。LAN接続でローカル運用も可能ですが、一部機能(リモート監視、MakerWorldからのワンクリック印刷など)はクラウドが必要です。
過去にBambu Labがファームウェアアップデートの方針変更で物議を醸したこともあり、クラウド依存に不安を感じるユーザーもいます。ここは人によって評価が分かれるポイントです。
P1Sからの乗り換えは人を選ぶ
P1Sで問題なく印刷できている人が、14万円出してP2Sに乗り換えるべきかというと、正直そこまでの差はありません。造形サイズも対応素材も同じです。
乗り換えが価値あるのは、「研磨材フィラメントを頻繁に使う(→ クイックスワップノズルの恩恵大)」「マルチカラーを常用する(→ AMS 2 Proの安定性)」「夜間の無人プリントが多い(→ AIカメラの安心感)」のいずれかに当てはまる人です。
どんな人にP2Sはおすすめ?
ここまでの内容を踏まえて、P2Sが向いている人・向いていない人をまとめます。
まとめ:P2Sは「P1Sの完成形」、ただし全員に必要な進化ではない
Bambu Lab P2Sは、タッチスクリーン、サーボモーター、AIカメラ、Adaptive Airflow、クイックスワップノズルと、P1Sの弱点をほぼ全て解消した正統進化モデルです。Tom’s Hardwareの4.5/5という評価も納得の完成度です。
ただし、14万2,000円という価格は「全員が買うべき」とは言い切れません。PLAがメインならA1 miniで十分ですし、コスパで選ぶならCentauri Carbon 2 Comboという選択肢もあります。
P2Sが真価を発揮するのは、密閉チャンバーで高温素材を安定して印刷し、サーボモーターでTPUも柔軟に扱い、AIカメラで無人運転も安心してこなせる――そういう「1台で全部やりたい」ホビイストにとっての最適解です。
僕自身、A1 miniの次のステップとして一番現実的な選択肢だと感じています。ABSで機能パーツを作りたい欲求がずっとあるので、次のセールで本気で検討する予定です。
3Dプリンター選びに迷っている方は、FDM 3Dプリンター比較記事も参考にしてみてください。素材選びの基礎知識はPLAとABSの比較記事、初めての方には3Dプリンターに必要な道具まとめもおすすめです。

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